一般眼科General Ophthalmology
はやり目(流行性角結膜炎結膜炎)について/Epidemic Keratoconjunctivitis

白目の表面を被っている半透明の粘膜を結膜といい、外部から白目(強膜)を守っています。結膜の炎症が結膜炎です。細菌、ウイルス、アレルギーなどいろいろな原因で起こります。ウイルスが原因で起こるものをウイルス性結膜炎といいます。原因ウイルスには、アデノウイルス、エンテロウイルス、ヘルペスウイルスがあります。他人からウイルスが粘膜に感染して発症します。ウイルスが感染することはご存じかと思います。中でもウイルス性急性結膜炎を起こすアデノウイルスとエンテロウイルスは非常に感染力が強く短期間に感染が広がることがあり、学校や職場内などの集団感染などの原因になります。よくみられる病気で、ウイルス性急性結膜炎には①流行性角結膜炎、②咽頭結膜熱、③急性出血性結膜炎があります。ほとんどが接触感染ですが、くしゃみなどで飛沫感染することもあります。
①流行性角結膜炎とは
流行性角結膜炎はアデノウイルス(8型、19型、37型、53型)によって起こります。どの季節でも起こりますが、夏に多く発症します。感染力が強く、一般に「はやり目」と呼ばれる結膜炎です。
症状
約1~2週間の潜伏期間の後に急激に高度の結膜充血、めやに、流涙、眼痛で発症します。耳の前に存在するリンパ節(耳前リンパ節)が腫れて圧痛を伴うこともあります。最初は片目だけに発症しても、数日中にもう片目に発症することがよくあります。通常は発症して約1週間後に病気のピークがあり、ほとんどは1~2週間で治ります。重症な場合は感染力も強く経過も長くかかります。重症化して炎症が強くなると結膜(まぶたの裏)に白い炎症性の偽膜ができたり、角膜(黒目)に小さな点状の濁り(角膜上皮下混濁)を発症します。
診断
ろ胞性結膜炎などの臨床所見で診断しますが、結膜からウイルス抗原を検出する迅速診断キットも使います。キットは若干感度が低いため判定が陰性だとしても流行性角結膜炎を否定はできないのがこの検査の弱点です。特異性は高いので陽性であれば流行性角結膜炎と診断できます。
治療
アデノウイルスに有効な薬剤はないため、炎症をおさえる対症療法の点眼を行います。ウイルス感染中は細菌の感染を起こしやすくなるため抗生剤の点眼も同時に行います。2週間以上経過すればウイルスに対する抗体が体内で作られてきて自然に治ります。
②咽頭結膜熱
アデノウイルス(3型、4型、7型など)によって起こる結膜炎です。潜伏期間は5日~7日です。目の症状は流行性角結膜炎より弱いですが、のどの痛みや39度前後の発熱などのかぜの症状がみられます。潜伏期や経過などは流行性角結膜炎と似ています。プールを介して夏かぜとして流行することがあり「プール熱」と呼ばれます。
③急性出血性結膜炎
エンテロウイルス(70型)やコクサッキーA24変異株などエンテロウイルスの仲間によって起こる結膜炎です。充血、目やに、強いゴロゴロ感などの症状が突然出てきて白目に点状の出血がよくみられるのでこの病名がついています。潜伏期は1日前後で、ほとんどの場合、両目に発症しますが、1週間以内に治ります。かつてはアポロ病などの名前で呼ばれ、感染力が強く世界中で大流行を起こしています。
生活上の注意
ウイルス性急性結膜炎と診断された場合は他人との接触を避けて周囲の人に感染を広めないように注意する必要があります。学校保健法では学校伝染病に指定されているので、学童の場合は、医師が感染力がなくなったと判断するまで出席停止することになります。成人の場合はそのような法的拘束はありませんが、伝染を防ぐために出勤停止を医師から指示される場合があります。食品関係の仕事や接客業、学校などの他人と接触する機会の多い仕事に従事している方の中には、職場の規則で出勤停止が義務づけられている場合もあります。社会人でも集団感染を防止する意味で、できるだけ仕事を休むのが望ましいといえます。
他人へ感染させる恐れのある期間は通常、流行性角結膜炎や咽頭結膜熱で約1~2週間、急性出血性結膜炎で3~4日です。眼帯は感染源になるので避けた方がよいでしょう。角膜上皮下混濁などの合併症がでた場合は治療を続ける必要がありますので指示された点眼は必ず使用して下さい。