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子供の近視治療

Treatment of childhood myopia

子供の近視についてChildhood myopia

近視を進行させないことの重要性

子供の近視について

近視は複数の遺伝因子のもとに環境因子が合わさって発症すると考えられています。近視は進行すると網膜剥離、緑内障、近視性黄斑変性症、近視性視神経症、高度近視性内斜視などのさまざまな視機能障害を生じることがあり、わが国では失明原因の5番目に位置しています。これらの視力障害の有病率は近視度数に応じて(近視が強くなる程)増加していきます。

例えば強度近視になると網膜剝離は22倍、緑内障は14倍、近視性黄斑変性症は40倍もかかりやすくなると言われています。近視人口が増加すると近視に付随したさまざまな眼疾患も増加することになります。また、近視が強くなるほど眼鏡のレンズの厚みが増して牛乳瓶の底のようなレンズになり、眼鏡では十分な視力を出すことも難しくなります。美容上も大きなマイナスになります。近視関連眼疾患の多くが強い近視(強度近視)から発症するので、近視が発症する6歳頃から近視が落ちつく18歳頃迄の間に近視の進行を抑制することができれば、将来的に強度近視の発症を減らすことができます。

特に小学校入学以前に近視を発症してしまう早期の近視発症例は強度近視に至る可能性が高く注意が必要です。近視だから眼鏡をかけて見えれば大丈夫という考えではなく、近視の進行は病気に繋がる可能性があるため進行予防が大切です。

近視を進行させないためには

子供の近視について

最近、近視の進むメカニズムもだんだんわかってきました。成長期には外部の環境に合わせて目の奥行(眼軸長)をコントロールする力があり長時間近くのものを見ることで眼軸長が伸びて近視は進行してしまいます。強い度数の眼鏡の装用も近視を進行させてしまう場合があります。

近視はある程度進むと視力の低下をきたしますが、初期は視力の低下はそれ程ないために、視力検査をするだけでは近視の存在をわからない場合があります。6歳から12歳頃までが近視が進みやすい時期ですので近視治療は小学生のうちに行う必要があります。そのため、視力の低下がない時期に近視を発見することが大切になります。

近年は夜間遅くまでパソコン、スマートフォンやタブレット端末などのディスプレイを見ることが多くなり学童でも手にする機会が増えています。実はこのスマートフォンやタブレット端末は近方で使用するために近視を進行させてしまう可能性があります。また夜遅くに使用するとブルーライト暴露による体内時計(サーカディアンリズム)に影響を及ぼし、体内時計のバランスの崩れが近視の進行に影響するとも言われています。放置すれば斜視、就学不能やうつ病の発生につながることもあります。

なぜ以前に比べて近視がこれ程増えているのかは環境の変化として、日本では室内あそびが戸外あそびより増えたことが原因と考えられています。また、スマートフォンやタブレット端末は近方で見るため近視進行の原因になることも十分考えられます。逆に環境因子を変えることで近視進行を変化させられる可能性があります。台湾では2010年から国を挙げて屋外活動の時間を毎日120分とる『天天戸外120』で近視の割合の抑制に成功しています。

以下の3点を実行することが大切になります。

スマートフォンの使用は小学校を卒業するまでは避ける
近くのものを見るときは35cm(拳4~5個分くらい)は離して見る
日中、なるべく1日に合計で2時間以上外に出る
(日陰程度の明るさ1000ルクス以上が望ましい)

近視の検査について

治療を開始する前には近視の状態を正確に把握するためにサイプレジンという目薬を使用して検査をします。検査後は1~2日間まぶしく感じたり、近くを見たときにぼやける状態が続きますので(遠視の場合は遠くもぼやける場合があります)、大事な用事があるときは避けてください。また、検査に1.5時間くらいかかりますので受付終了の1.5時間前までには受付を済ませてください。検査、診察後に御本人に適切な治療についてお話しします。

近視の進行を抑制する治療(近視は治るのか?)

近方を見ることで近視は進行してしまいます。近方を見る時間が限りなく無くなれば近視はほとんど進行しなくなるでしょう。しかし文明社会では現実的ではありません。初期の近視の中には近くを見る時間が急に増えたために、一時的にピント合わせの機能が上手く働かなくなり見かけ上、近視になってしまう場合(仮性近視)があります。仮性近視は治療でよくなることがあります。見えないからといって安易に眼鏡をかけてしまうと治るチャンスを失うこともあります。
残念ながら、近視は治療によって治すことはできません。近視の進行を抑制して将来、強度近視にならないようにするのが治療になります。視力だけでは近視の状態はわからない場合があるので定期的な診察による進行のチェックが必要になります。

近視の進行を抑制する治療にはオルソケラトロジー0.01%低濃度アトロピン点眼(マイオピン点眼液)、多焦点眼鏡、多焦点ソフトコンタクトレンズがあります。現在、日本で認可されておりもっともエビデンスの高い治療はオルソケラトロジーです。当院では2010年からオルソケラトロジーを始めて約400人の方が治療を受けられています。

0.01%低濃度アトロピン点眼についてはその効果が日本でも確認されました。またオルソケラトロジーとの併用療法についても効果があると言われています。どの治療がよいのかは個人によって異なります。将来、さらによい治療が出てくる可能性もあります。現在できることを頑張ることが大切です。近視だから眼鏡をかければ大丈夫というのは必ずしもよいことではありません。

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